コスト指標活用等実証事業事例紹介

持続可能な価格形成へ
豆腐・納豆のコスト指標づくり

業界横断で挑むコスト指標の作成

価格をめぐる議論が難しさを増すなか、業界として共通の土台を持てるかどうかが問われています。豆腐・納豆業界がコスト指標づくりに挑んだ背景と、その設計の枠組みを紹介します。

二本立てで進める実証事業

豆腐・納豆業界が取り組んだ令和6年度コスト指標活用等実証事業は、大きく二つの柱で構成されています。第一は、豆腐・納豆におけるコスト指標(案)を作成し、その算出手法を検証すること。第二は、将来的な継続運用を見据え、コスト指標作成団体としての在り方を整理することです。単に数値を算出するのではなく、誰がどのような体制で指標を作成し、どのように更新していくのかまでを視野に入れた設計となっています。

背景にあるのは、労務費や原料大豆の価格、資材費、光熱費、運賃などの上昇です。これらの費用増加を各企業が個別に説明し、価格交渉に臨むことには限界がありました。特に中小規模の事業者にとっては、客観的なデータに基づく合理的な説明を行うことが難しい場面も少なくありませんでした。

全国納豆協同組合連合会では、業界として共通の指標を検討することに意義を見いだし、本実証事業に参画しました。一方で、指標があれば直ちに課題が解決するわけではないという認識も共有されています。企業規模や事業構造の違いにより費用構造は大きく異なり、示された数値がすべてを正確に表すとは限らないからです。

それでも、何も示さなければ議論は進みません。まずはコスト指標(案)をモデル的に示し、検証と改善を重ねていく。そうした段階的なアプローチが選択されました。

共通原料を軸にした業界連携

今回、豆腐業界と納豆業界は連携して実証に取り組みました。両者は原料として大豆を共通原料とする一方で、製品構成や価格帯には違いがあります。

納豆は、40〜50g程度の3連パックという標準的な形態が広く流通しており、比較的一定のモデルを設定しやすい特徴があります。これに対し、豆腐は絹ごし豆腐・木綿豆腐の違いや充填豆腐・カット豆腐の製法により製品の多様性が大きく、単一のモデルで束ねることには慎重な検討が必要とされました。

こうした違いを踏まえつつ、豆腐と納豆の議論を相互に参照しながら検討を深める体制で議論を行いました。具体的には、豆腐・納豆の各製造団体、原料大豆の生産者団体、食品卸売団体、小売団体、消費者団体が参画する全体会議と、豆腐・納豆の各製造団体のみが参画する豆腐分科会、納豆分科会の2つの分科会を設置しました。全体会議では、コスト指標作成団体の組成方法や、コスト指標の使い方、全体の進め方等を議論しつつ、2つの分科会では、豆腐・納豆の各製造段階のコストの算出方法について、実務的な検討を行いました。製造から消費に至るまでの各段階の関係者が参画することで、議論の妥当性と透明性を担保する検討体制としました。

豆腐 納豆

「答え」ではなく、土台をつくる取組

本実証事業は、価格そのものを決定する仕組みではありません。あくまで、合理的な費用を考慮した価格形成に向けた「共通の土台」を整える取組です。

また、示された指標は、すべての企業にそのまま適用できる絶対的な基準ではありません。しかし、費用構造を可視化し、説明の材料を共有することには大きな意味があります。業界として共通の枠組みを持つことが、価格に関する対話の出発点となるからです。

最初から完全な指標を求めるのではなく、まずは検討のたたき台となるコスト指標(案)を示し、検証を重ねながら精度を高めていく。その積み重ねが、業界の持続可能性を支える基盤づくりにつながると捉えています。

背景には、コスト上昇を価格に反映できない状況が続けば、事業者の退出が進みかねないという危機感があります。本取組は、業界の強化にとどまらず、豆腐・納豆という日常食を支える産業の持続性を日本社会全体で守るという視点から位置づけられています。